IPO(Initial Public Offering:新規株式公開)は多くのベンチャーにとって、社会的な信用と巨額の資金を得るための重要な手段であり、併せて株主にとっても、投資のリターンを獲得する為に最も有効な出口手段となっています。IPOを実現した場合、数十億円から百億円以上の資金調達が可能となります。
IPOを予定・希望する企業は全国に数千社以上(もしくは1万社以上)あると言われています。しかし、IPO希望会社の適格性の要因や主幹事証券・取引所・監査法人のキャパシティ(人手不足)等により、IPO準備作業の支援を受けられる会社は1,000社程度、
実際にIPOを実現できるのは、年間100社程度(成功率は10%未満)となります。
【全般】
株式公開を目指すにあたっては、数年前から徐々に組織形態、内部統制、経営計画等を整備する必要があります。特に上場予定日の直前期からは、主幹事証券の公開審査が開始し、大量の質問事項が送付され、これに対する正確な回答、インタビュー、必要に応じて改善等を行うことが求められるため、担当者は非常にハードな日々となります。
【利益計画】
経営戦略をベースとして、将来の利益計画を策定し、その合理性と妥当性を説明していくプロセスは、IPOにおいて重要な工程となります。
オーナーの鶴の一声で理不尽な利益計画が策定されるような組織である場合には、公開審査において否定されます。
IPOにおいてコンプライアンス、ガバナンス、リスク管理態勢などの内部統制の欠陥、不祥事、不正等は、IPOがの延期・中止要素となります。これらの内部統制を整備するにあたって、社内規定の整備が重要となります。
【社内規定】
未公開会社では法令順守のための規定が十分に揃っていないことが多く、その為、コンプライアンス・リスクが高い状態にあります。これを改善し、上場企業として規律ある経営を行うため、社内規定の整備が必要となります。
一般的には、経営企画部(室)、IPO準備室等、経営を管理している部署がIPOを担当することが多いです。
【メリット】
1.客観的な視点に基づく助言、主幹事や監査法人には相談しにくい繊細な事案についても相談可能となります。
2.上場準備業務のサポートが期待できます。
【デメリット】
1.当然ですが報酬が発生します。(一般的には年間数百万円程。契約によっては成功報酬。)
2.取引所や証券会社に対する直接回答は会社や経営陣が行う必要があります。
最近では、AIやクラウドシステムを用いてIPO準備のタスク管理を効率化するシステムも開発されていると新聞報道されておりますので、これらの活用も有効なソリューションとなり得ます。
コーポレートガバナンスに関する最近の状況について、記載しております。
1999年に制定され、その後OECD加盟国とG20の議論を経て、2023年の改定が目指されています。
特に感染症対策、Degitalization、気候変動(ESG)等の多様な経営リスクに備えるための取締役会の機能強化を求めるものとして、リスクに関する専門委員会を設置することが推奨されています。金融機関では、リスク管理委員会(通称RMC)を設置することが普及していますが、事業会社では、ごく一部の大手企業にとどまっています。
事業のリスクへの対処については、経営者の基本的な義務となっていますが、リスク管理の専門家が社内にいない場合、有効な議論や対処法が難しくなっています。したがって、リスク管理の専門家を含めた委員会を設置することで、より高度な検討が可能となります。
最近では社外取締役の強化によって、コーポレート・ガバナンスを補強する動きがみられますが、一方で形骸的な状態となっているケースも散見されます。機能的なガバナンスを構築することで、様々な不正事故から会社を守ることが可能となります。